前編中編後編の3回にわたってシングル「HELP」メンバーのオフィシャルインタビューを掲載
――新曲「HELP」は、活動休止を経た今にふさわしい力強い曲。ツアーパンフレット用のインタビュー時はまだ仮歌詞でしたが、そこから大きく変化したのですか?
山村隆太:HELPというキーワードは既にありましたし、変わっていないです。自分の弱さを伝えるのは大事なことだし、「助けて」と言える世の中であってほしい、という願いを歌にしたいな、と強く思っていました。flumpoolはこれまで〝伝える″ことを大事にしてきたバンドだけど、前回のツアーでは僕の機能性発声障害が原因で、一度は伝えられなくなって……そこで1回立ち止まり、音楽ができない時期があったからこそ、もう一度こうして音楽を届けられるうれしさや感動がある。その強さがそのまま詰まった楽曲になったんじゃないかな?と思います。
――山村さん自身が「助けて!」と最初は言えなくて苦しんだこと、それを乗り越えたこと、両方の体験が反映されていますよね。
山村:以前は、僕自身どこか強がっているところがあったし、「弱さをさらけ出すと見放されてしまうんじゃないか? 期待されなくなってしまうんじゃないか?」という不安にいつの間にか縛られてることって誰しもある気がするんです。でも、それは要らないプライドだったなと今では感じていて。自分が笑っていようが泣いていようが、別に人はそんなに他人のことを気に掛けてないと思う。だから、人からどう見られるかを気にするよりも、メンバーとかスタッフとか、身近な人たちとちゃんと本音をぶつけ合うことのほうが大事なんですよね。最初はすごく勇気が要るかもしれないけど、一度弱さを伝えてしてしまえば意外と、「あ、こんなもんか」ってなる。怯えていた自分を「なんでだったんだろう?」と思うぐらい、やってみると楽になるし、独りよがりじゃなくなったと感じていて。それをこの曲で伝えられたらいいな、と思っています。
――実体験を入り口に、世の中の風潮へも目を向けた歌詞になっています。
山村:千葉の野田市の虐待死事件もそうですし、幼い子どもや弱い立場にある人たちが周りの大人に助けを求めても、振り絞って出した声さえも受け止められずに聞き逃されてしまったり、逆に「そんなこと言うなよ」とねじ伏せられたりすることが、今の世の中ではたくさんありますよね。たとえ実情はそういう辛い世の中だとしても、「そうじゃない世の中もあるんじゃないかな?」と思っていて。助けてくれない人もいるけど、助けてくれる人もきっといる。だから、怖さはあるけれども、自分から言葉を発すること、想いを伝えることは大事だし、そこは諦めちゃいけなくて。僕自身、諦めなかったからこそここまで来られたとも思っているんです。
――そんな歌詞を受けて、一生さんはどんなふうに曲をつくりあげていきましたか?
阪井一生:歌詞先行なのは「明日への賛歌」以来ですごく久しぶりだし、しかも、かなり出来上がっている状態のものが今回はあったので、あまり今までにないつくり方でしたね。山村の書いた歌詞を見ながら、そのテーマを意識して音も寄せていく、というか。歌詞がある分、世界観はなんとなく分かっていたので、やりやすかったです。
――曲作りの出発点はどこからでしたか?
阪井:ザックリとですけど、今の完成形のようなアレンジの構成は頭の中にあったので、そこからですかね。「こういう世界観でつくっていこう」というイメージは元からありました。並行して何曲かつくりながら、やり取りを重ねて今のこの形の「HELP」に向かっていった、という感じです。
――完成前の段階で聴いた時、山村さんはどう思われましたか?
山村:はじめは、仮歌詞をそのままぴったりメロディーに当てはめて歌にしてくれたものがあって、それも良かったんだけど……。
阪井:ちょっと明るすぎたんやな、あの時。
山村:うん、それは言ったかも。「暗くしてくれ」というわけではないんですけど、「もうちょっと暗すぎず、明るすぎず」という難しいリクエストをしました。あと、「バラードっぽくならないようにしたい」とも言っていて。同じことを伝えるにしても、バラードでゆったりと伝えることもできるし、アップテンポで明るく伝えることもできるけど、今回は説教臭くはならないほうがいいんじゃないかな?と思ったんですね。自分たちをも引っ張っていってくれるような、そういう力強さが欲しかった。明るさとはまた違った推進力というか、〝前に向かう力″であってほしいな、というイメージはあったので。でも、一生は僕の中にあったイメージを超えてくれてるんですよ。僕はここまで力強い感じで来ると思ってなくて、ドラム、ベースもそうだし、ここまで骨太なアレンジは意外だったけど、逆にそれが良かったなと。僕が「暗くなってしまうから、バラードじゃないほうがいいな」と危惧してた部分を払拭してくれる、引っ張って行ってくれる力強さがあったので、その化学変化はさすがだな、と思いました。
――一生さんとしても、そこは心掛けたところだったんですか?
阪井:どうだったかな? ああいうタム回しとかサビでドーン!と来る強さとか、コーラスワークは意識していましたけど。エレキギターがジャンジャン鳴らされるわけではないし、軽快さはそこで出せたかな?というのはありますね。
――冒頭のキラキラとした音色のリフは、ギターですか? ハープか何かですか?
阪井:あれはシンセでつくっているので、ハープとか、いろんな音が混ざっている音です。民族楽器だとか、プラックシンセみたいな粒系の音を混ぜたものですね。
――ドラムのリズムは四分打ちでずっと進んでいき、Cメロでぐっと躍動感が増していきます。誠司さんはドラマーとしてどうアプローチしましたか?
小倉誠司:レコーディングをやりながら細かいところを変えていく感じでした。もちろん、打ち込みでつくっているのと、実際に生で音を当ててみるのとではやっぱり空気感が違うので、少し調整したり。リズムとしては力強さもあるし、でも同じフレーズがずっと続いていくので、ある意味(前半は)我慢をしていて。Cメロでハイハットのオープンが出て来て世界観が広がっていく、というのはflumpoolとしては新しい感じがします。スケール感も大きいし、「いい曲だな。映画のテーマソングになってもいいぐらいの曲だな」と最初に聴いた時から思っていました。
――歌詞に込められたメッセージについては、メンバーとしてどう受け止めましたか?
小倉:山村の想いが本当に詰まった1曲ですよね。同じような心情になることはリスナーの方誰しもあると思うし、僕もあるし。「助けてほしいな」という時に「助けて」と言えない自分であったり、言えない環境であったり。それを音にどう変換するか?は難しいところではあるんですけど、タム回しの力強さでは出せているかな?と思います。軽快ではあるけれども、ちゃんと重心がそこにあって、説得力があって。そうじゃないと、この曲は成り立たないな、とは思いましたね。
――元気さんは曲のメッセージをどう受け止め、プレイに反映しましたか?
尼川元気:僕はノータッチです。
一同:(笑)
尼川:マジでノータッチ。今回ルートしか弾いてないんで。
山村:あはは!
尼川:そうですね。ルート以外の音はたぶん、アウトロの3個ぐらいしか入ってないです。
阪井:珍しいのはピックで弾いたことぐらいやな。
尼川:うん。いつもはピックでは弾かないんですけど、あの軽快感だけは無くさないように、と思ったので。指では出ない感じやったから。それぐらいかな? だから、まだちゃんと弾けてないですけどね。
一同:(笑)
尼川:まだ完成してないです。音圧がすごく厚いんで、(ベース音が隠れて)なんとかなってます(笑)。
阪井:音圧に助けられてる(笑)。
――歌詞について、今はどう感じていますか?
尼川:うーん……難しいなって思います。この生々しさって、果たしていいのかな?って。僕は〝中の人″なので、すごく響くものがあるんですけど。それはもちろんファンの人たちもそうだと思うんですけど、一般的にはどうなんやろうな?って。客観的にはまだあまり見られないから。やっぱり〝山村が今歌ってめちゃめちゃ強い曲″なので、背景を知っている方が聴いてめちゃめちゃ強い曲だと思うんです。それがまったく初見の人に「果たしてどう聞こえるんやろう?」って、想像できてなくて。「説教臭く聞こえてたらどうしよう?」とか、自分でも捉えきれてない部分はあります。ただ、〝中の人″としては「すごく強い曲だな」と。そういう感じかな?
――体験したことがまざまざと蘇るような?
尼川:そうですね、いろいろ背景を知ってるし。でも、ライブではすごく強い曲になるのかな?とは思います。
山村:たしかに、これまでのストーリーがあるから響く、というのはあるよな。
尼川:今までで一番、それをそのまま歌詞にしてるから。それがどう受け取られるのかな?っていうのはありますね。
――ただ、個人的な体験に限定した表現ではなく、聴き手が自分のことを重ねて聴ける余白はあると思うんです。私と公のバランスが絶妙ではないでしょうか?
山村:どうなんですかね? ただ、いい悪いのジャッジにおいて、これまでの楽曲では「世の中で響くか? 響かないか?」というところをすごく意識してたんですけど、この曲は「一番響いてほしいけど、響くかは分からない」というか。ただ、覚悟はありますよね。そのぐらい「今の自分たちが歌えるのはこの曲しかない! これを一番伝えたい」という強さがある楽曲だと思うんです。
つづく
(取材・文/大前多恵)
――「HELP」の<片方で泣いたって 片方で笑えるなら生きてゆける>という歌詞が印象的で。負の部分もちゃんと描き込みながら、「でも、希望もあるよね」という提示の仕方がリアルで誠実だと思いました。
山村隆太:その一文は、この曲で今一番伝えたかったことです。やっぱり、僕も一人じゃないから頑張れたと思うんです。実際、この4人でバンドをやっていてもうまく行かないことのほうが多いし、ライブをしても自分たちが夢見ていたものにはまだまだ遠いな、と感じることばかりで。でもそれが〝泣く″ことだとしても、やっぱり4人でいる楽しさ、〝笑える″ことがあるし、それは表裏一体で、どっちもあるからこそやっていけるんだろうなって。昔「Hydrangea」という曲でもそういうことを書いたんですけど、「まあ、笑えるならいいか」みたいなね。いくら泣くことが多くても、生きている中で笑える瞬間があるならいいんじゃないかな?と思うんですよね。苦しいとしても、「HELP(助けて)」と伝えることによって何かが変わると思うし、もし現状が変わらなくても、伝えたことによって誰かが助けてくれたり、同じような境遇の友だちができたりするかもしれないし。それによって自分の気持ちが少しでも軽くなったり笑ったりできる、そんな空間が一つでもこの世界にある。狭い空間だとしてもそれがあるなら、それはそれですごく希望のあることだな、と感じます。
――一生さんは歌詞について、どう思われましたか?
阪井一生:いい歌詞やと思います。
山村:珍しく言ってくれたよな。
阪井:そう、「いい歌詞や」って、山村に珍しく言ったんですよ。「何がいいか?」って言われたら、分からない(笑)。なんか響くんです。山村の実体験が込められてるから、という意味での「いい」よりも、単純に「いい」と思ったんです。この言葉が。
尼川元気:分かりやすいってことやな、単純に。
阪井:そういうことやな、たぶん。
山村:たしかにシンプルだしね。
尼川:でも、<笑顔が咲く丘へ行こうぜ>の「ぜ」はちょっとだけ気になる。
阪井:それはレコーディングの時も悩んでたよな?
山村:いやいや、(1番Aメロの)「優等生」と掛かってんねん!
阪井:最近韻を踏むのめっちゃ好きやん?
尼川:昔から好きやけど(笑)。
阪井:メロディー的に「ぜ」のほうが強くてカッコいい、というのはあるけど。
山村:音としても面白い響きになったほうがいいと思ったし、メロディーを覚えやすいんじゃないかな?と思って。
尼川:あと、当て字がマジ鼻につく!
一同:(笑)
阪井:たしかに最近、当て字多いな。
尼川:時代に逆行する当て字(笑)。
山村:若い子たちも想像しやすいように、「鼓舞して」に「はげまして」ってルビ振ってんねん!
阪井:じゃあ「励まして」でええがな!
山村:いや、普通は相手を励ますからさ。
阪井:ああ、そういう意味があんねや。
尼川:「未来」を「いつか」と読ませる、とか。
山村:ここは字面でも楽しんでほしいのよ。やっぱり歌詞書きやからさ。歌詞の中でのもう一つの面白さをつくりたいな、という想いがあって。だから、相手に委ねるというよりも、「自分でこの想像を伝えたい」というか。それで当て字がちょっと多くなってしまって(笑)。
尼川:今回めちゃ多い。カラオケで歌われた時、ちょっとハズいな(笑)。
山村:これからどんどん増えていって、「本気と書いてマジと読む」みたいな(笑)そのうちやり出すで?
小倉誠司:あはは!
――(笑)。でも、「自分を守るため」の「自分」を「きみ」と読ませて語り掛けるような当て字は、象徴的で意味深いと思いました。「助けてほしかったら言ってね」と普段人に言っている人自身が弱音を吐かない、という例は実際、多いですよね。
山村:そうですね、やっぱり人間というのは守る側に立ちたいんですよね。僕の場合は、人にナメられたくないというプライドが以前はあって、だからこそ躓いたんだな、と今は思っていて。周りを頼ることができなかったから回復するのも遅くなったし、無理したまま続けたのでどんどん悪化して悪循環になっていったし……そういう意味では、「頼る側になるのも勇気なんじゃないかな?」と思うんですよね。人を守ることばかりが善とされがちですけど、援助希求力、助けを求める力も世の中にはすごく大事な力としてあって、そのことはあまり知られていない。助けを求めるというのは、自分に力のないことを認めることだと思われがちですけど、そうじゃなくて。人を見ていると分かることも、自分のこととなるとあまり客観的に見られないものですけど、「自分を守るのは悪いことじゃない」というのは伝わるといいな、と思っています。
――そして感動的なのは、<忘れないで 〝僕ら″が待ってる>のフレーズ。僕ではなく僕らとなっていて、flumpoolというバンドのスタンスを示しているようで。
山村:そうですね。ここはバンドとして、もう一つ届けたいところがありますよね。「自分たちが辛かった」とただ伝えるだけじゃなくて、「一緒に進んでいこう」と言いたい。flumpoolがいつも言ってきたメッセージですけども、「僕たちと一緒に頑張ろう」という気持ちはすごく強いですね。
――再始動後のシングルとしてふさわしいリード曲になりましたね。
山村:たとえ響かなかったとしても、「自分たちはこれが一番いいんだ!」と言えていることが一番だと思うんです。誰かのために音楽をやってるわけじゃないけど、やっぱり人には喜んでほしい、という葛藤はこれまで常にありました。この曲を今自分たちが「最高!」と思えてるのは幸せなことで。周りを気にせず音楽をつくっていた原点に近い感覚でつくることができたし、次を切り裂いている、未来を切り開いていってくれるような曲にしていきたいな、と思います。
――flumpoolを愛するファンの方たちがこの曲を聴いて熱狂して、その発信によって広がり、バンドストーリーを知らない人も「聴いてみよう」と思えるような力を持つ曲じゃないでしょうか?
山村:うん、それがすごく健全な順番ですよね。メンバーがまず「この曲、いい」と言ってくれるのを最優先にできているし、その次にスタッフが「いい」と言ってくれて、その先にはファンがいて、そのまた外に僕らを知らない人たちがいて次へと繋がっていく、というのはものすごく正しい順番な気がしますね。そのどこかを飛ばしちゃいけない、というのを昔の僕は分かっていなかったし、なんならメンバーを飛び越してファンに先に、と思った時期もあったし。でもそうじゃなくて、この4人だからこそ発信したい、という想いを一番強く持てているのは、今すごくいい状態なんじゃないかな?と思います。
――「空の旅路」は、ザ・flumpoolの王道を行くイメージの楽曲でした。
阪井:メロディーに関してはたしかに、ありますね。Innovative Brewer SORACHI 1984というビールのドキュメンタリームービーのテーマソングとして書き下ろした曲です。開発に関わった方たちの名言を資料として読ませてもらったら、「一歩も動けなかった」とか、「こういう困ったことがあった」とか書いてあって、まさに『プロフェッショナル』の世界やな、と。それを元にイメージを膨らませて、ストリングスがメインになったバラードよりも、バンドの生楽器がしっかりと聞こえるようなバラードにしたいな、と思ってつくっていきました。
山村:歌詞は、個性を貫く難しさと大事さをテーマにしています。僕ら自身、音楽をやっているという自由な身だったはずなのに、自分たちがやりたいことを捻じ曲げて違う道に進んだこともあったし、「大人だから」という理由一つで我を抑えてしまうこともあったんですよね。「本当にそれが大人なのかな?」と考えた時、「そうじゃないんじゃないかな?」って、10年前にデビューした頃の自分なら言っているような気がして。例えば、歌詞の中で、路地裏で忘れ去られたビニール傘を、今の自分たちや未来の自分たちに譬えてるんですけど。いつか雨が止んだら置いて行かれてしまう寂しさや虚しさも感じるけど、「誰かのために一瞬でも傘になれたらいいな」とも思うし。自分たちが音楽を通して誰かに何かを届けたい、楽しい時間をつくりたいと思うことが、ただその人たちのためだけになってしまっても良くないし、自分たちのためだけになっても、それはそれで役目がないし。そういう葛藤はあるけれども、世の中にさらされていろんなことを意識してきた10年を経た上で、もう一歩踏み出すのが自分たちで、そこに残されているものが「自分たちらしさ」なんだな、と思うんです。それを見つける旅でもあると思いますしね。
――誠司さんはこの曲に関してはどう捉えましたか?
小倉:この曲だけではなく、今回のシングルを最初に通して聴いた時、インスピレーションとして、「ああ、これが日本のロックなのかな」と思ったんです。J‐POPという言葉には、僕の印象としては、大衆であったり、彩りの豊かなキラキラした世界観があって。J‐ROCKという言葉はあまり聞かないし、ロックという言葉でまとめられていますけど、そこには〝自分″というものがすごく強いメッセージ性としてあると思うし、反骨心や反発心、時には愚痴であったりも存在している。今回の「HELP」も「空の旅路」も、そのPOPとROCKの両方のいいところをちゃんと持っていて、今の自分が思う日本のロックをちゃんとやってる、と思うんですよ。ちゃんと〝人のために″というポップスの良さもあるし、活動休止中に自分が感じて来た辛い想いなどをちゃんと吐き出しているロックな部分もあるし、ちゃんと共感できる内容でもあるし。そのリアリティーが歌詞にすごく出てるな、と全体的なインスピレーションとして感じましたね。
――それは以前よりも強く感じることだったんですか?
小倉:以前は、あったとしても極端だったのかな?という気がしますね。自分のことだったら自分のことだけで、例えば「Because... Iam」もそういう感じだったし、逆に他人のことだったら他人のことだけで。割合が6:4とか7:3だったのが、今回はイーブンでできているような聞こえ方がしたので、僕の思う日本のロックをちゃんとやってる、と感じました。
――「空の旅路」について、元気さんはどうですか?
尼川:ファーストインプレッションでは、‘90年代みたいな当て字を遣うなぁっていう。
山村:いやいや(笑)。何回言うねん! ほんまに皆「そうなんかな?」って思うやろ(笑)。
小倉:皆気にするやろうな、当て字(笑)。
尼川:やっぱね、流行りは回るから。
山村:古いみたいに言うな!
阪井:先取りや。
尼川:むしろめちゃめちゃ早い、「最先端の音楽やってます」って自信持って言おう、と思いました。カラオケで是非、初見の人たちの前で歌ってください!
――歌詞を文字で読みたい、と思う人が増えるといいですよね。
山村:いや、この発言で増えないでしょ(笑)。
一同:(笑)
つづく
(取材・文/大前多恵)
――「HOPE」は打ち込み色が強いシンセサウンドですね。
阪井一生:これはある意味、問題作。
尼川元気:本間昭光先生が編曲してくださって。
阪井:元々はかなりバンドっぽいアレンジの曲で、「reboot(2010年リリースのシングル「reboot 〜あきらめない詩〜」) Ⅱ」ぐらいの気持ちだったんですけど。去年の(FIFA)ワールドカップの時ぐらいにつくっていて、仮タイトルも「ルカク」というベルギーの選手の名前を付けていたぐらいで。そういうガン!と勢いのあるバンド感とストリングス、みたいな世界観でつくってたんですけど、ザ・flumpool感が満載過ぎたので、それを壊すぐらいのことに挑戦したい、という話になって。今回アレンジを初めてお願いした本間さんにいろいろお話しして、全く色の違うものにしよう、と。メロディーはこのままで、ちょっとアレンジを変えてみようか、というチャレンジから始まって、最終的にはえらく変わりまして。元々の自分の中のイメージが強かったので、ちょっと変わり過ぎて「大丈夫か?」という戸惑いがあったぐらいに(笑)。でもこの曲はライブ映えしますね。ツアーでやってみて、これで良かったと思った。
尼川:でも、ライブアレンジしてるからな。
阪井:ま、それはそうやけど(笑)。音源は同期だらけなんですけど、ライブでは生楽器を結構メインに音を出しているので、それによってもまた聞こえ方が違いますよね。
小倉誠司:実際、ライブでやっていて、楽しいですよ。
尼川:レコーディングは全然楽しくなかった(笑)。5分くらいで終わったので、「ええっ、もう終わり!?」って。
阪井:生楽器の役割が、ほぼなかったからね。
小倉:うん、それはそうだった。
尼川:一回やってみて、「ほらね、合わないでしょ?」と。たしかにその通りなので、「はい」って言うしかなかった。
阪井:その「合わないでしょ?」っていうのをライブではやってるんですけどね(笑)。
尼川:そう、ライブでは全部思ってた通りにやってみてます(笑)。
阪井:でも、大きく言えば「ライブだから(アレンジが違う)」っていう感じで観られると思うけどね。
尼川:そう観てくれればいいですね。
――いずれにしても挑戦作だった、と(笑)。この曲だけ歌詞にラブソング感がありますよね。
山村:そうですね。これは最後に書いたんですけど、1曲ぐらいこういう曲があったほうがバランス的にもいいんじゃないかな?と。あと、「HELP」では助けを呼ぶと報われると歌っていて、すべての曲が前向きだとちょっとどうかな?とも思ったので、報われないもの、叶わないものも影の部分として1曲あってほしいなって。僕らとしても休止中、いいことだけじゃなかったし、報われずに終わったものもやっぱりありますしね。なので、ラブソングにはなってますけど、届かない想いみたいなものもちゃんと書きたいな、と思って書いていました。
――「つながり」は再始動にあたり、まずは配信でファンクラブの方限定でお届けしていた曲ですよね?
小倉:うん、そうですね。
尼川:当初は、いつかは(アルバムに)入れようか、ぐらいな感じだったと思います。
山村:無期限の活動休止だったにも関わらず、ありがたいことに、僕たちを待っていてくれた人たちがいたんですよね。いつ帰ってくるかも分からない人を待つというのが一番辛いことだと思うので、その間も繋がろうとしてくれたファンに向けてつくった曲です。繋がりのない中でも必死に手を伸ばしてくれてた人たちにすごく助けられて。こちらからは手を伸ばさないのに、向こうからだけ手を差し伸べてくれてること、その気持ちにすごく救われたところがありました。繋がろうとしてくれてありがとうという想いと共に、結局人間は一人だと思うんですけど、でも一人同士だからこそ繋がり合える喜び、抱き合える喜び、手を握れる喜びがあるんだろうな、という想いもあって。お互いの一つ一つの孤独を結び合えたらいいな、そこに強さがあるんじゃないかな?ということを休止中に教えてもらったので、それを言葉にしたいな、と感じてつくった曲です。すごくいい曲になったし、ファンに向けて書いた曲だからと言ってファンの前でだけ届けるのも、ファンの人たちの本望でもない気もしたので、今回こうして収録して、たくさんの人に聴いてほしいと思っています。
――ファンの方に対してはツンデレな一面のある元気さんですけど。
尼川:そうですか? そんなことないですけどね。
――こういうストレートな曲を届けることに対して、どんな想いがありますか?
尼川:(※手元の歌詞をじっと読んで)へ~、こんな歌詞やったんや! ベースラインだけを追ってたので、分からなかったです(笑)。
――(笑)では今読んでみて、どんな発見がありましたか?
尼川:これは当て字がないな~と思いました。
山村:いやいや、探さんでええ(笑)。別に常に入れてるわけじゃないし。
――では、誠司さんはいかがですか?
小倉:他の3曲に比べるとストレートじゃないですか? 言葉としてちゃんとストレートに出すのが大事な時期だったんだろうなって思います。
阪井:この曲はシングルになると思ってたんですけどね。
山村:言ってたよな、たしかに。
阪井:ならなかったので、僕としてはショックでした(笑)。
――メッセージは熱いですけど、アレンジは風通しがいいというか、軽妙ですよね?
阪井:うん、活動休止中は洋楽をよく聴いていて、そういう曲を自分もつくりたいと思っていたので、その影響が出てるのかもしれないですね。復活を意識した中でつくってはいて、そこでもあまり「flumpoolと言えばコレでしょ!」という王道な感じの曲よりも、新しいほうを見せたいなと思ったので。こういうちょっと打ち込みっぽい、アコースティックだけど人間っぽくない感じはアレンジとしては新しいかな?と思って、つくっていました。
山村:最近アコギ多いな。俺も好きやけど。
阪井:アコギ、いいよ。このバンドはアコギが似合う。
尼川:山村は弾けへんけどな。
山村:ま、一生が弾いて(笑)。でもたしかに、休止を経てアコギの使い方が変化したのはあるよな。
――前はもっとフォーキーな使い方でしたよね。
阪井:アコギが今みたいに前に出て来る感じは今まではなかった。
尼川:フレーズとして使ってなかったとこはあるな。
阪井:そうそう。やっぱり「産声」(※元気が作詞作曲)の影響で。
尼川:でも「産声」はフォーキーな、いなたいほうやで(笑)。
――全国ツアーが既に始まっていますが、今感じていることや今後の意気込みを聞かせてください。
小倉:僕のドラムでメンバーが楽しんでいるところを見て、お客さんには楽しんでほしいなあ、と思っています。僕のドラムを聴いて気持ちよさそうに歌っている山村がいて、気持ちよさそうに演奏している一生と尼川がいて、その姿をフィルターのように通してflumpoolというものを感じてほしいんです。今回のツアーを通して、それがもっともっと濃いものになっていけばいいな、と思っていますね。山村も言っていたように、僕も昔、メンバーを飛び越してファンに届け!みたいな勘違いをしていた時期がありました。でも一番身近にいるのはやっぱりメンバーなので、まずはメンバーにいかに楽しんでもらえるか。そのメンバーの姿を見て、いかにファンの人たちに喜んでもらえるか、スタッフに喜んでもらえるか、なんです。そういったツアーにしたいな、と思ってます。
尼川:俺は逆に、偉い人に一番にまずは届けて……。
一同:(笑)
尼川:偉い人、スポンサーさん、その次がメンバーっていう順番ですかね。
――冗談はさておき……(笑)。例えば演出面はどうですか?
尼川:いい感じだと思いますよ? でもまだちょいちょい変えるところもあるかな。お楽しみに!
阪井:ホールツアーは久しぶりなので、難しいなと思います。ライブハウスとは違うな、と。お客さんの反応がちょっと分かりづらいんですよね。
――遠く感じるということですか?
阪井:はい、遠い感じがします……MCにおいて。
山村:あ、そっち(笑)?
阪井:そう、MCだけの話でけすどね。
――でもバンドの世界観を演出で見せるにはホールって適していますよね?
阪井:演出はそうですね。
尼川:MCはやっぱメンバーを笑わすの大事やな。だから、MCは〝メンバーを最初に″っていう順序で合ってる(笑)。
阪井:それは絶対あるな。ボケた後、やっぱりまずは尼川を見るもん(笑)。
一同:(笑)
阪井:メンバーを絶対に見る。でも山村はゲラやから、どうせすぐ笑うねん。
尼川:あと、後ろから(吉田)翔平ちゃん(Violin)とか(磯貝)サイモン(Key・Cho・G)さんが「ワッハッハ!」と笑ってるのがマイクを通して聞こえてきたら、「お、笑ってくれてる」ってうれしくなる。
阪井:それでテンション上がってきますからね。だから、テンション上がっていくのはメンバーからってことですよね。メンバーは大事ですよ、やっぱり。
尼川:順番、合ってたな!
阪井:合ってた(笑)。このツアーではその順番で、もっと盛り上げていきます。
山村:このツアーはすごく強いエネルギーがあると思っています。それはきっと、バンドが一回立ち止まったからだと思うんです。音楽をやり続けることを一度諦めた僕が、もう一度挑戦することの大切さを伝えたくて付けた、ツアータイトル【⌘⇧Z】(コマンドシフトゼット)。一つ戻ってもう一回進んで、諦めた夢を追い掛ける。それはいくつになってもできるんだ、という希望と覚悟を込めています。例えば、一度辞めた学校や会社に再入学、再入社したり、一度別れた恋人同士の復縁だったり。人それぞれにあると思うんですけど、一度諦めた場所に戻って次の場所へと踏み出そうとするには、前以上のエネルギーが必要で。僕らも一度立ち止まって、1年ほどの時間の中でいろんなことを悩み考えました。でも、もう一回「やっぱりここに行きたいな」と思った時って、人ってそれまで以上のエネルギーが必ず湧いてくるものだと思うんです。今が一番エネルギーを持ってる時期だし、既にそういうツアーになっていると実感しているし。今の自分たちが一番熱いと思うので、「そういう時、人って熱くなるよね」というのを目の当たりにしてもらえたら、と思います。
(取材・文/大前多恵)
シングル
CD収録楽曲
M1. HELP
M2. 空の旅路「Innovative Brewer SORACHI1984」
ドキュメンタリームービー テーマソングM3. HOPE
M4. つながり
DVD収録内容
初回限定盤DVDの内容は、活動休止から再始動を遂げた現在までを振り返る、メンバーソロインタビューも収録されたドキュメントムービー。
今作が初出となる多くの秘蔵映像と共に、山村隆太、そして、flumpool復活の軌跡をたどる。再始動後のflumpoolドキュメントムービーの第一章とも言える内容になっている。
CD収録楽曲
M1. HELP
M2. 空の旅路「Innovative Brewer SORACHI1984」
ドキュメンタリームービー テーマソングM3. HOPE
M4. つながり
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Stay tuned for more information!